美術の検討のためのイニシャルスケッチ

オペラ《箱》
-日本語上演・世界初演-

文化庁「ARTS for the future!」支援事業
空間創造 Oto 主催 CamerataProject(カメラータ・プロジェクト)


|日時|
2021 年 12 月 9 日(木)18:00 開演

|会場|
サンパール荒川 大ホール

|アーカイブ配信|
2021 年 12 月 29 日(木)〜31日(金)
|作曲|
永井秀和

|台本/演出|
角直之

|指揮|
湯川紘惠

|キャスト|
Sop.渡辺智美
Mez.福間章子
Ten.堀越俊成
Bar.高田智士

|オーケストラ|
カメラータ・プロジェクト・オーケストラ
コンサートミストレス:山田香子
Vn / 池田聖香・菊池武文・若杉知怜  Va / 小室明佳里・角田峻史  Vc / 田辺純一・原宗史
Cb / 小幡明日香  Fl / 池田佳月  Ob / 裵紗蘭  Cl / 安藤友香理  Fg / 坪谷陸
Hr / 阿部華苗  Perc / 竹内美乃莉

|スタッフ|
​美術 / 星野善晴
舞台監督 / 小田原築  照明 / 青山航大  副指揮 / 村上史昴
稽古ピアニスト / 有岡奈保・永井みなみ  制作代表 / 福島達朗  制作副代表 / 小幡明日香
制作 / 小口梨菜・田村真歩・小野寺彩音  広報物デザイン / 嘉春佳
『オペラ《箱》』に寄せて

 舞台上には、簡素な(作りかけの)壊れかけの“箱”らしきものと、(作りかけの)壊れかけの領域を示す“スクリーン”とで構成された、小さな空間装置をひっそりと設置します。そうすることで本作品を、わたしたち自身の日常の姿をそのまま示そうとするデモンストレーションと位置付けます。
 わたしたちが日々暮らしている集落、ひいてはわたしたち一人ひとりが送る日々の住まい方における、もっとも理想的と思われる状態を、どのように(表現するか)表現しないかの実験ということです。

 ある「箱=世界」は、その主体である中心を有し、一定の広がりをもち、領域を定めることで実現します。解放に向かうことだけでなく、領域を定義することが重要です。
 箱が解体され、「大地」と「天空」とのあいだで「神的なもの」との関係を探る、私たち「死すべき者」が、いかに大切なものを定め、広がりを確認し、領域を定めて生きていくか、私たち「死すべき者」が生きるということ、すなわち「住まう」ということとはどういうことなのか、いかに自身のたたずむ「場所」を見つけ立ち上げていくのか、という物語が、今回の美術を通して込められています。

 あまりに優美で、同時に矛盾と緊張感を帯びた、途方もなく美しい台本・音楽が、実は通時空的な一般性を備えた世界の記述であり、さらに、高度に個人化が進む現代の、わたしたちが住まうリアルな世界を穏やかに表現していることに着目し、C.ノルベルグ=シュルツの集落論と、その背景となったM.ハイデッガーの芸術論とを参照することで、私が取り組むべき課題の一端を掴むことができました。
 理想的な「場所」は、構造(“箱”らしきもの)とテクスチャ(“スクリーン”)で構成されるかもしれない。

 実に瞬間的で、いまを示すしかないものである舞台の性質に着目し、今回の制作では、“箱”の運動・時間、その瞬間を表現するため、作っていた美術の製作を、途中で止める、ということをしました。作る過程をギリギリのところで止める(作りかけで本番を迎える)ことで、完成された箱が解体されていくある瞬間を捉えようとしました。
 C.ノルベルグ=シュルツ最後の著作に与えられた副題『Presence, Language, Place』に示されたように、わたしたち自身=presence、台本・音楽=language、舞台・劇場=placeが共鳴するような作品を目指しました。

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